脈略のない記憶

血まみれのままニヤニヤと笑う、グレート東郷を映し出す白黒TV。傍らには、ランニング姿の父親と、騒々しい扇風機。蒸し暑い夏の夜。
森達也にとってのそんな記憶がぼくにもあるだろうかと考えて、思い出したのは二羽のニワトリ。(しゃれではない)潅木の合間を薄茶色に汚れたニワトリが短い鳴き声を発しながら歩き回っている光景を、確かに何度も見た覚えがあるのだけど、それがどこだったのか、いつ頃のことだったのかがまったく思い出せない。