自称最高傑作(文庫版解説執筆時現在)

君が代は千代に八千代に

君が代は千代に八千代に

鬼畜・悪魔・狂人と形容される、あるいはそのものとして扱われる、全く救いようのない人々を描いた小説は最近多いのではないだろうか。(僕はぜんぜん読んでいないのであくまで推測だけど。)例を挙げるなら、阿部和重中原昌也舞城王太郎などだろうか。この「君が代は千代に八千代に」も「救いのない人々」を描いた小説といえる。しかし、そのような人たちをここまで共感可能で、時には愛しくさえ思える存在として描いた文章を僕はほかに知らない。(僕が知らないというだけで世の中において稀有であるとは言い切れないのだけど。)矛盾しているかも知れないけど、共感や愛しさによって「救いのなさ」は少しもマシにはならない。